ちちのじょう
「能にして能に非ず」と言われる神事・祈祷曲「式三番(翁)」で、「翁」「三番叟(三番三)」とともに演じられる、老体の神の役名。「式三番」の名称は、「父尉・翁・三番叟」の三番からなる儀式の意味だが、「父尉」は室町時代初期には省略されるようになり、そのやり方が今に続いている。現在では、「式三番(翁)」を「父尉延命冠者」の演式で上演する場合に、延命冠者とともに登場する。また、父尉が用いる面も同じ名称で呼び、老翁ではあるが目尻がつり上がった引き締まった相貌で、白色尉や三番叟と同じ切顎が特徴である。