けさ
装束の一。仏教の僧が法衣の上から身に着ける布製の衣。能では、高僧、出家した者、仏に帰依する者、刑死に臨む者などの役に禅宗の袈裟の一種、「掛絡(から)」を用いる。輪の部分を首にかけ、方形の部分を胸の前に垂らして着用する。捨てられるような端切を集めて作る本義を表して小さい布を縫い合わせて作るが、実際は名物裂(めいぶつぎれ)*の金襴などを用いた豪華なものが多い。山伏の役に用いる袈裟で6つの梵天(玉房状のもの)がついたものを「篠懸(すずかけ)」と呼ぶが、篠懸はその下に着る法衣のことで、本来は「結袈裟(ゆいげさ)」という。また、武蔵坊弁慶など僧兵の役に用いる「袈裟頭巾」は、白い五條袈裟で頭を包むもので、本来は「裹頭(かとう)」という。狂言では掛絡、結袈裟とともに、大きな長方形の布を身体に巻くようにして着ける「五条袈裟」も用いる。
*めいぶつぎれ…室町時代を中心に鎌倉時代から江戸時代初頭にかけて舶載された染織品の中で、大名家や社寺などに所蔵されてきた極上の裂類、名物茶器の袋や仕覆として、また掛幅の表装裂として特別に名のあるものや、特に珍重されてきた裂類のこと